大阪市淀川区・新大阪の
【こおりたひろ整形形成外科クリニック】院長の郡田です。
当院では多数の【なつい式湿潤療法のブログ】を公開しています。
今回はその中から、膝を強くぶつけて挫滅創を負った11歳男児を、
なつい式湿潤療法で痛みなく治療した症例をご紹介します。
膝をぶつけて受傷した症例
患者さんは11歳、頭脳明晰で礼儀正しい男の子です。
学校で転倒し、溝に左膝を強くぶつけて受傷されました。
膝には皮膚や皮下組織が押し潰された「挫滅創(ざめつそう)」ができていました。
学校の保健室では従来通りの処置(消毒・ガーゼ)が行われましたが、
とても強い痛みがあったそうです。その後、当院を受診されました。
当院では「なつい式湿潤療法(moist wound healing)」をご説明し、
創傷被覆材での処置を開始しました。
最初の処置はほとんど痛みがなく、患者さんは安心した表情を見せてくれました。
もちろん当日からシャワー浴も可能で、抗生剤も不要でした。
治療の経過
湿潤療法では「毎日流水で洗い、創傷被覆材を貼る」だけ。
消毒も抗生物質の投与も行いません。
この症例でも感染傾向は一切なく、経過は非常に良好でした。
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加療後2日:滲出液は減少、痛みも軽度
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加療後5日:膝の曲げ伸ばしでの痛みが軽快
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加療後14日:傷はきれいに縮小
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加療後26日:ほぼ治癒、日常生活に支障なし
挫滅創とは?挫創・挫傷との違い
挫滅創(ざめつそう) とは、外力によって皮膚や皮下組織が
「押し潰される」ように損傷した傷を指します。
組織の壊死や感染リスクが高いため、適切な処置が不可欠です。
よく似た言葉に「挫創」「挫傷」があります。違いを整理すると:
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挫創(ざそう):皮膚が裂けて開いた傷。出血を伴うことが多い。
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挫傷(ざしょう):皮膚表面に傷はなく、
内部の筋肉や皮下組織が損傷している状態。いわゆる「打撲」に近い。 -
挫滅創(ざめつそう):さらに重度で、皮膚や皮下組織が押し潰され、
壊死しやすい状態。
👉 「挫滅創」はより深刻で、感染・瘢痕・機能障害につながる
可能性があるため、
正しい処置が重要です。
膝の擦り傷が曲げると痛いのはなぜ?
膝は関節の動きが大きく、皮膚や皮下組織が常に引っ張られる場所です。
そのため、擦り傷や挫滅創があると 曲げ伸ばしで傷口が開きやすく、
痛みが強く出る のが特徴です。
湿潤療法では創面を覆って保護し、乾燥や摩擦を防ぐため、
膝を動かしても痛みが少なく、日常生活を保ちやすくなります。
消毒や抗生剤が不要な理由
従来の「消毒・ガーゼ処置」には次のような問題があります。
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消毒によって皮膚常在菌まで死滅し、かえって感染しやすくなる
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健常な細胞も傷つけてしまい、治りが遅れる
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痛みが強く、子どもには大きな負担となる
一方、なつい式湿潤療法では:
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感染予防は流水(お湯でも可)で十分
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創傷被覆材で湿潤環境を保ち、細胞が活発に再生する
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消毒も抗生剤も不要、しかも痛みがほとんどない
👉 この症例でも、一度も消毒を行わず、
抗生剤も処方せずにきれいに治癒しました。
保護者の方へのメッセージ
膝の擦り傷や挫滅創を負ったとき、
「まず消毒してガーゼで覆わないと」
と思われる方は少なくありません。
しかし実際には、流水でしっかり洗い、湿潤環境を保つこと
が最良の治療です。もし傷が深い、出血が多い、膝の動きに影響がある場合には、
早めに正しい「なつい式湿潤療法」をしている医療機関を受診してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 挫滅創とは何ですか?
A1. 外力で皮膚や皮下組織が押し潰され、壊死しやすい傷です。
擦り傷や切り傷よりも重度で、適切な処置が必要です。
Q2. 挫創や挫傷との違いはありますか?
A2. 挫創は皮膚が裂けた傷、挫傷は打撲のように皮膚表面に傷がない状態です。
挫滅創はその中でも特に重度で、組織が潰れて壊死する可能性があります。
Q3. 膝の擦り傷が曲げると痛いのはなぜ?
A3. 関節の動きで皮膚が引っ張られるためです。
なつい式湿潤療法で保護すると痛みが軽減します。
Q4. 消毒や抗生剤は本当に不要ですか?
A4. はい。流水洗浄と被覆材で十分です。
消毒は正常組織を破壊する為に、かえって治癒を妨げます。
まとめ
この症例では、膝の挫滅創を「なつい式湿潤療法」で治療し、
痛みなく短期間で治癒しました。
挫滅創や膝の擦り傷は「消毒しない・乾かさない」ことが大切です。
正しい処置であれば、感染を防ぎつつ早くきれいに治すことができます。
湿潤療法で治療した他の症例も多数公開しています。
👉 他の【なつい式湿潤療法のブログ】もぜひご覧ください。
ここで「消毒」に関して、少し書かせて頂きます。
激痛を伴う「消毒」をする事によって、少しでも感染予防になったり、
傷が綺麗に治ったり、早く治るのであれば、「消毒」をする意味が御座います。
しかし、「消毒」する事によって、皮膚を守ってくれている皮膚常在菌が
死滅されますし、正常な皮膚も痛みます。
よって、「消毒」する事によって、感染しやすくなり、
傷が深くなり、治るのが遅くなるのです。
「消毒」することは、痛みを伴う上に、良い事が全くないのです。
(私も「湿潤療法」に出会う4年前までは、良かれと思い、
消毒の効果を信じ、何の疑いも無く、消毒、ガーゼ処置をしておりました。
それまでの患者さんには、申し訳ない気持ちで一杯です。
「なつい式湿潤療法」を教えて頂いた夏井睦先生には感謝感謝です。)
感染予防の為には、流水(お湯でもOK)で洗い流すことが一番です。