【症例紹介】テレビ台にぶつけてできた1歳児のまぶたの傷を、なつい式湿潤療法とテーピングで綺麗に治癒した一例|消毒なし・抗生物質なしで対応
大阪市淀川区・新大阪にある【こおりたひろ整形形成外科クリニック】院長の郡田です。
今回は、1歳の可愛い男の子が受傷されたまぶたの割創に対して、なつい式湿潤療法とテーピングにて対応し、綺麗に治癒した症例をご紹介いたします。
🩺 受傷の経緯
男の子は1歳。
ご自宅でテレビ台の角に左まぶたをぶつけて受傷されました。
お母さまは湿潤療法についてよくご存じの方で、念のために「キズパワーパッド」を常備しておられました。
受傷直後、とっさの判断でキズパワーパッドを貼って一晩過ごされたそうです。
🔍 当院での診察と処置
翌日、当院を受診されました。
診察の結果、傷の性状は皮膚が擦れて剥がれる「皮膚欠損創」ではなく、裂けるように切れた「割創」であることが分かりました。
そのため、キズパワーパッドのような創傷被覆材(ハイドロコロイド)ではなく、テープで皮膚同士を寄せる処置を選択いたしました。
💡 テーピング処置のポイント
割創の場合、テープによる初期処置がとても重要です。
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お子さんはどうしてもテープを剥がしてしまう傾向があります。
→ そのため、剥がれにくくなるように工夫して貼ることが大切です。 -
圧迫を加えて止血することも重要です。
→ 出血が続くと血腫(血のかたまり)になり、これが感染源となるリスクがあります。
→ よって、血腫を作らないように圧迫をかけることが非常に大切です。
💊 術後の管理について
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消毒は一度も行っておりません。
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毎日のシャワー・入浴は問題ありません。
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感染兆候は一切見られず、抗生物質の処方もしておりません。
(※補足:抗生物質は“予防的”に服用する薬ではありません。感染が起きてから使用する薬です。)
🌈 治癒の経過とご家族の反応
処置後の経過は非常に順調で、傷跡もほとんど残らず綺麗に治癒しました。
お母さまには大変喜んでいただき、私たちスタッフもとても嬉しく思っております。
✅ まとめ:なつい式湿潤療法と適切な初期対応で、小さなお子さんの傷も美しく治癒します
今回のように、小児の顔面やまぶたに生じた傷でも、湿潤療法を正しく行うことで、縫合や消毒をせずに綺麗に治すことが可能です。
また、「割創」と「擦過傷(皮膚欠損創)」では処置が異なり、見極めと適切な対応が重要になります。
なつい式湿潤療法を正しく理解し、初期対応を適切に行うことが、綺麗な仕上がりへの第一歩です。

加療後2日

加療後6日
🌿 なつい式湿潤療法に関するよくあるご質問【FAQ】
Q1. なつい式湿潤療法とは何ですか?
A. 湿潤療法とは、傷を乾かさずに「湿った環境を保つことで自然治癒力を最大限に助ける治療法」です。
消毒液やガーゼを使用せず、創傷を適度な湿度で保護することで痛みが少なく、傷跡もきれいに治るのが特徴です。
当院では「なつい式湿潤療法」に基づいた方法で治療を行っています。
Q2. なぜ消毒をしないのですか?
A. 消毒液は細菌だけでなく、皮膚の治癒に必要な細胞まで殺してしまうため、治りを遅くしたり、かえって傷跡を残しやすくなります。
湿潤療法では、消毒はせず、皮膚が本来持っている再生能力を最大限助けて治します。
Q3. なつい式湿潤療法ではどんな処置をするのですか?
A. ハイドロコロイドやポリウレタンフィルムなどの医療用の透明シールやパッドを使用し、傷を覆って湿潤環境を保ちます。
傷の種類に応じてワセリンを併用することもあります。
自宅では入浴・シャワーも基本的に可能です。
Q4. 痛みはありますか?
A. なつい式湿潤療法はガーゼ交換による「剥がすときの痛み」がありません。
また、傷の治癒も早いため、痛みが軽減されるケースが多いです。
痛み止めが不要なことも多く、お子様や高齢者にもやさしい治療法です。
Q5. 傷跡はきれいになりますか?
A. 傷の深さや場所によって個人差はありますが、なつい式湿潤療法は乾燥させて治す方法に比べて、傷跡が目立ちにくくなります。
特に顔など目立つ部位には適しています。
Q6. 毎日通院する必要はありますか?
A. 基本的には毎日通院する必要はありません。ご自宅での処置方法(とっても簡単です)をご説明しますので、セルフケアで管理が可能です。
ただし、傷の状態によっては数日に1度の通院が必要になることもあります。
Q7. 感染の心配はありませんか?
A. 適切に湿潤環境が保たれていれば、むしろ感染リスクは低くなります。
ただし、異常な痛みや腫れ・熱感・発赤などが出た場合はすぐに受診してください。
Q8. 子どもにも適応できますか?
A. はい、なつい式湿潤療法は小さなお子様にも非常に適しています。
傷の痛みが少なく、ガーゼを無理に剥がす必要もないため、治療のストレスが少なくなります。
当院では数多くのお子様の傷の治療実績があります。
Q9. なつい式湿潤療法が受けられる病院は限られているのですか?
A. はい、なつい式湿潤療法を積極的に導入している医療機関はまだ多くはありません。
当院では、院長が豊富な症例経験に基づき、すべての傷に対して湿潤療法を基本とした治療を行っています。
本日は、学会出席の為、休診とさせて頂いております。
ご迷惑おかけいたしますが、ご了承の程、宜しくお願い致します。