患者さんは、3歳の可愛い可愛い女の子です。
他府県でキャンプをしている際に、熱湯が体にかかり熱傷されました。
キャンプ場の近くの救急病院を受診。ガーゼ処置だったそうです。
翌日、自宅に帰り、親族がご勤務されている地域の基幹病院である○○病院形成外科を受診されました。
そこでは、石鹸で創部を洗い、フィブラストスプレー、アズノール軟膏を塗る処置を3日間受けられました。
あまりにも痛がり暴れる娘を無理やり押さえつけてする処置に納得がいかず、また、今後の経過等に関してあまり詳しい説明が無かったことにも納得がいかず、色々と調べられ、「湿潤療法」目的にて当院をご受診されました。
創部を石鹸で洗ったら、大人だって痛くて痛くて、涙が出ると思います。その上、フィブラストスプレー、アズノールです。これら2つの薬品は、創部を深くします。よって、痛くなって当然です。僕だって、暴れると思います。
洗う事は重要ですが、石鹸を使用してはいけません。石鹸は界面活性剤が入っておりますので、創部が深くなります。
シャワーのお湯をかけ流すだけで良いのです。
医師からは、創部からの浸出液が多いからという理由で、石鹸で洗うように言われたようです。
創部からの浸出液は「細胞成長因子」というもので、創部を治そうとして自分の体から出てくる、非常に大切な液です。ですから、極力大事にしないといけないといけない「液」なのです。
「細胞成長因子」を極力創部にとどまらせるために創部に蓋をして、絶えず創部が新鮮な「細胞成長因子」で満たされるという特殊な環境を人為的に創ってあげる治療が、「湿潤療法」です。
湿潤療法の原理を説明させて頂きました。
また、3週間ほどで治るであろうことも、説明させて頂きました。
もちろん、毎日シャワー、入浴 OK です。
感染状態にはなりませんでしたので、抗生物質は処方しておりません。
初診時、前医からつけられていたガーゼを剥がし、創傷被覆材に変えたとたんに
「痛く無くなった!」と元気に大きな声で言ってくれたことが、非常に嬉しかったです。
しかし、やはり今までの押さえつけての処置がトラウマとなっているのでしょう。
僕自身が怖かったのかもしれません。
毎回、処置の際には、泣かれてしまいました。
しかし、3週間ほどで綺麗に治り(通院回数 6回)、大変喜んで頂きました。
おそらく、石鹸洗浄、フィブラストスプレー、アズノール処置をあと3回継続して受けられていたとしたら、創部の一部がケロイド状になっていたと思います。最後は本当に可愛いニッコリ笑顔でした。
この日は、ご機嫌斜めで、胸部、上腕の診察はさせて貰えませんでした。子供の診察は、本当に難しいです。まだまだ精進が必要です。