【症例紹介】左もみ上げ部の粉瘤を「くりぬき法」で手術し、
なつい式湿潤療法で綺麗に治癒した一例
今回は、粉瘤(アテローム)の一例をご紹介いたします。
粉瘤は、皮膚の下にできる袋状の腫瘤(しゅりゅう)で、
比較的よく見られる良性の皮膚疾患です。
ただし、「自然に治るだろう」と放置していると、
炎症を起こして赤く腫れたり、痛みが出たり、膿が出てきたりすることもあり、
再発を繰り返すケースもあります。
適切な診断と治療がとても大切です。
■ 患者さんの情報
・年齢:62歳
・性別:男性
・発症部位:左側もみ上げ部(耳の前あたり)
・初診時の経緯:他院では「抗生物質を処方して経過観察」との方針でしたが、
症状がまったく改善せず、
インターネットで当院を見つけて下さり、来院されました。
■ 手術方法:「くりぬき法(穿刺切開法)」で粉瘤を除去
当院では、粉瘤治療に「くりぬき法」を積極的に採用しています。
この方法は、粉瘤の中心に見られる「開口部(黒い点)」からアプローチし、
専用器具(トレパン)を使って小さな穴を開け、
内容物と袋(嚢腫)を丸ごと摘出する低侵襲手術です。
<くりぬき法のメリット>
・傷口が非常に小さく、目立ちにくい傷跡
・手術時間が短く、日帰りで可能
・局所麻酔のみで対応可能
・粉瘤の袋をしっかり除去でき、再発率が低い
今回の症例でも、このくりぬき法で安全に粉瘤を摘出し、
術後の痛みも最小限でした。
■ 術後管理:「なつい式湿潤療法」で消毒・抗生物質なしでも良好な経過
手術後の創部管理には、「なつい式湿潤療法」を採用しております。
これは、医師・夏井睦先生が提唱する最新の創傷治療法で、
創部を乾かさず湿潤状態を保つことで、
以下のような利点があります。
<なつい式湿潤療法の特徴>
・消毒やガーゼ交換は不要
・痛みが少ない
・感染リスクが低い
・傷跡がきれいに仕上がる
今回の患者さんも、術後に一度も消毒は行っておらず、
抗生物質も処方しておりません。
さらに、毎日のシャワー・入浴も問題なく可能でしたが、
感染は全く起こらず、順調に治癒しました。
■ 5年後の経過:綺麗な仕上がりに患者さんも満足
この患者さんは、術後から5年が経過したタイミングで、
別のご相談のため再び当院を受診されました。
その際、術後の部位(左もみ上げ部)を診察させていただきましたが、
とてもきれいに治っており、目立つ傷跡もありませんでした。
患者さんからも「綺麗に治ってよかった」と嬉しいお言葉をいただき、
写真の撮影に快くご協力くださいました(掲載許可ありがとうございます)。

粉瘤摘出前の状態です(左頬部に2cm大の腫瘤を認めます)。

頬部にできた粉瘤(約2cm)の被膜をくりぬき法にて摘出している術中写真です。

頬部に生じた約2cmの粉瘤の被膜を摘出した直後の状態です。

頬部にできた粉瘤を摘出した翌日の状態です。腫れは軽度で、感染所見はありません。

術後5日目の頬部の状態です。腫れ、痛み、感染傾向は認められませんでした。

術後12日目:頬の粉瘤摘出後、傷跡は平坦化し、感染や痛みはありません。

術後19日目:頬の粉瘤摘出部はほぼ治癒し、感染や痛みは一切認められません。

術後5年経過:頬の粉瘤摘出部は傷跡も目立たず、自然な皮膚の状態に回復しました。
■ 粉瘤でお困りの方へ|自然には治りません
粉瘤は自然に治ることはほとんどなく、放置していると炎症や感染のリスクが高まります。
炎症を起こしてからでは、かえって治療が難しくなることもあるため、早めの受診と適切な処置が大切です。
こおりたひろ整形形成外科クリニック(新大阪駅近く)では、
くりぬき法による低侵襲な手術と、なつい式湿潤療法による痛みの少ない術後管理を組み合わせた、粉瘤治療を行っています。
「これ、粉瘤かもしれない?」
「他院で経過観察と言われたけど、心配…」
「他院で抗生物質を処方されたけど、全然治らない…」
そんな方は、ぜひ一度、当院へご相談ください。
🔵 粉瘤(アテローム)に関するよくあるご質問(FAQ)
Q1. 粉瘤とは何ですか?
A.
粉瘤(ふんりゅう、アテローム)とは、皮膚の下にできる袋状の良性腫瘍です。
中には皮脂や角質が溜まっており、自然に消えることはほとんどありません。
放置すると炎症を起こし、腫れ・痛み・膿が出ることがあります。
Q2. 粉瘤は自然に治りますか?
A.
自然に治ることは基本的にありません。
小さくなることがあっても、内部の袋(被膜)が残るため、再発することが多いです。
再発予防には手術による摘出が必要です。
Q3. 炎症があるときは手術できないのですか?
A.
他院で「炎症があると手術できない」と言われることがありますが、
当院では炎症があっても「くりぬき法」による手術が可能です。
むしろ早期の手術により、痛みや腫れが早く改善します。
Q4. 抗生物質では治らないのですか?
A.
炎症が強い粉瘤には抗生物質は無効です。
なぜなら、炎症は袋の内部で起きており、その袋には血流がないため、薬が届かないからです。
よって、袋ごと手術で取り除くことが根本的な治療になります。
Q5. 手術はどんな方法ですか?
A.
当院では「くりぬき法」という方法を用いて、できるだけ小さい傷で袋(被膜)まで完全に取り除きます。
傷跡も非常に小さく、術後の痛みも最小限です。
Q6. 術後の処置はどのように行いますか?
A.
なつい式湿潤療法という方法で、傷を乾かさずに治す処置を行っています。
・消毒しません
・ガーゼ交換不要
・シャワー・入浴も翌日からOK
・抗生物質も基本的に処方しません
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Q7. 術後に再発することはありますか?
A.
袋を完全に摘出できれば再発はほとんど御座いません。
当院では術中に被膜をしっかり取り除くことを重視しています。
Q8. 手術後の痛みや腫れはどの程度ありますか?
A.
炎症が強かった症例でも、術後の痛みは少ないケースがほとんどです。
多くの患者様が「想像していたより痛くない」と話されます。
Q9. 粉瘤が小さいうちに手術した方が良いですか?
A.
はい、小さいうちに手術することで、傷跡も小さく、手術時間や回復も短く済みます。
炎症が起きてからでは、痛みも強く治療が複雑になります。
Q10. 粉瘤の手術は健康保険が使えますか?
A.
はい、粉瘤の手術は保険診療の対象です。
手術の規模や部位により、負担額が異なる場合があります。