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顎部割創(2歳)を縫合せず治療|11年後、傷跡ほぼ不明

 大阪市淀川区・新大阪にある
こおりた ひろ整形形成外科クリニック院長の郡田です。
今回は、2歳お子さんの顎部割創を縫合せずに治療し、
11年後まで経過を確認できた症例をご紹介いたします。

顎部の割創は、一般的には縫合が選択されることも多い外傷です。
そこでまず、親御さんに対して、

  • 縫合による治療

  • 縫合せず、テープ固定で治療する方法

それぞれの治療法について説明を行いました。

縫合は決して間違った治療ではありません。
ただし、縫合には局所麻酔が必要であり、その麻酔自体が痛みを伴います。
2歳のお子さんにとっては、処置そのものが大きな負担になることも少なくありません。

一方で、創部を正しく寄せてテープ固定を行えば、縫合しなくてもきれいに治ることがあることも、
これまでの経験からお伝えしました。

その結果、今回は
縫合は行わず、テープ固定による治療を希望されました。

創部をよく洗浄した後、
ハイドロコロイド材を用いて、創縁を寄せるように貼付し、
なつい式湿潤療法で治療を開始しました。

2歳児の顎部割創。受傷後初診時の状態。縫合せず、なつい式湿潤療法による治療を開始した外傷の写真。

受傷後初診時の顎部割創


それから11年後

2歳時に顎部割創を受傷し、縫合せずなつい式湿潤療法で治療した症例の術後11年写真。成長後の日常生活では、ほぼ傷跡が分からない状態。

なつい式湿潤療法で治療した顎部割創の術後11年。成長後の日常生活では、ほぼ傷跡が分からない状態です。


患者さんは別のご用件で当院を受診されました。

そこに来院されたのは、
すっかり成長された13歳の青年でした。

11年前の写真をお見せして、
「覚えている?」と尋ねてみましたが、
ご本人は「覚えていません」とのこと。

一方で、ご一緒に来院されたお母さまは、
当時のことをはっきりと覚えておられ、

「すっかりきれいに治りました。
どこを怪我したのか、もう全く分からないです。
こんな傷だったんですね。もう忘れていました。」

とおっしゃってくださいました。


創部を正しく寄せ、適切にハイドロコロイドを貼付すれば、
ぱっくり開いた傷でも、かなりきれいに治ることがあります。

もちろん、縫合も非常に良い治療法です。
創部がずれにくく、確実性が高いというメリットがあります。

一方で、
テープ固定の最大のメリットは、処置がほとんど痛くないことです。

当院では、

  • それぞれの治療法のメリット・デメリットをきちんと説明し

  • 患者さん、ご家族に納得して選択していただき

  • どちらを選ばれても、その判断を尊重して治療する

ことを大切にしています。


まとめ(親御さんへのメッセージ)

お子さんが転倒して顔を切ってしまったとき、
多くの親御さんは、

「縫わないと跡が残るのではないか」
「本当に大丈夫なのだろうか」

と強い不安を感じられると思います。

しかし、すべての外傷が必ずしも縫合を必要とするわけではありません。
創部の状態を正しく見極め、適切に寄せて固定し、乾燥させないことで、
縫合を行わなくても、きれいに治る傷も数多くあります。

もちろん、縫合が適している傷もあります。
大切なのは、「どちらが正しいか」ではなく、
それぞれの治療法の特徴を理解したうえで、納得して選択することです。

当院では、治療法を一方的に押しつけることはありません。
お子さんとご家族にとって、できるだけ負担の少ない方法を一緒に考え、
その選択を尊重した治療を行っています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 子どもが顔を切りました。縫わなくても本当に大丈夫ですか?

傷の大きさや深さ、場所によって異なります。
創部を正しく寄せることができる場合には、
縫合を行わなくてもきれいに治ることがあります。
一方で、縫合が適している傷もありますので、必ず医師の診察を受けてください。


Q2. 縫合しないと、傷跡が目立ちませんか?

必ずしもそうではありません。
乾燥させず、湿潤環境を保って治療することで、
縫合しなくても傷跡が目立ちにくくなる場合があります。

今回の症例では、11年後にほとんど傷跡が分からない状態でした。


Q3. なつい式湿潤療法とはどのような治療法ですか?

傷を乾かさず、消毒に頼りすぎず、
皮膚が本来持っている自己治癒力を最大限に活かす治療法です。
外傷ややけどなど、日常で起こりやすいケガの治療に広く応用されています。


Q4. 縫合とテープ固定、それぞれのメリットは何ですか?

  • 縫合のメリット:創部がずれにくく、確実性が高い

  • テープ固定のメリット:処置がほとんど痛くなく、小さなお子さんへの負担が少ない

傷の状態や年齢、ご本人・ご家族の希望を考慮して選択することが大切です。


Q5. どちらの治療法を選んでも、きちんと診てもらえますか?

はい。
当院では、治療法の選択そのものを大切にしています。
どちらを選ばれても、その判断を尊重し、最善の治療を行います。
(但し、縫合がご希望の場合は、局所麻酔に耐えられる方に限ります。)


当院の治療理念:なつい式湿潤療法

なつい式湿潤療法」は、日本の形成外科医であり、
湿潤療法の第一人者として高く評価されている
夏井睦先生 によって確立された治療法です。
この治療法は、消毒やガーゼを使用せず、創部を湿潤環境に保つことで、
痛みを最小限に抑え、治癒を促進します。
当院では、夏井先生の効果的な治療理念に基づいた創傷管理を実践しています。
夏井睦先生公式サイト「新しい創傷治療」


🖊️ 執筆者情報

執筆者:郡田 大宇 医師
こおりたひろ整形形成外科クリニック 院長)

専門分野:整形外科・形成外科・熱傷・粉瘤・ほくろ・イボ・巻き爪手術
経験・実績:粉瘤手術を中心に累計6,000件(年間約500件)以上の手術実績
粉瘤、ケガ、やけどなど、くりぬき法なつい式湿潤療法
による症例をブログに1,000例以上掲載しています。

すべての症例は院長自身が診察・手術・経過観察を行っています。

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