【症例報告】7か月女児の点滴漏れによる皮膚壊死|湿潤療法で植皮せずに完治したケース
はじめに
患者さんは生後7か月の女児で、非常に可愛らしい赤ちゃんです。
インフルエンザによりA病院小児科に入院中、大量の点滴漏れが生じ、
右手関節部に皮膚壊死を発症しました。
初期治療経過
小児科からB大学医学部付属病院皮膚科の○○先生へコンサルトが行われ、
デルモベート軟膏+ガーゼ処置が実施されました。
しかし、改善が見られず、A病院の判断でゲンタシン軟膏+ガーゼ処置に変更。
その後も傷は悪化し、黒色壊死が進行。最終的にゲーベンクリームへ変更となりました。
他院での診断と混乱
A病院の医師からは「湿潤療法を実施している」と説明されていましたが、
ガーゼ使用時点で湿潤療法とはかけ離れた治療です。
また、湿潤療法を行う医師がゲーベンクリームを使用することはありません。
さらに、他院(C皮膚科)では「今すぐ植皮をしないと大変なことになる」
と説明され、保護者の方は深い不安に包まれていました。
当院受診後の治療方針と説明
保護者の方に、以下のように説明いたしました:
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なつい式湿潤療法の正確な内容の説明
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毎日のシャワー・入浴は問題なし
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黒色壊死は約2週間で自然融解→その後上皮化する
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植皮は不要。確実に治癒する見込みである
医学的考察
点滴漏れによる皮膚壊死は、病態として低温熱傷に類似すると考えられます。
ただし、私自身も点滴漏れによる壊死の症例は初めてであり、
慎重を期すため、夏井睦先生にメールで相談いたしました。
多忙な中、すぐにご返信をいただき、私の治療方針に誤りがないことを確認させて頂きました。
このことは大きな安心材料となり、心より感謝申し上げます。

初診時(背側)

初診時(側面)

加療後4日(背側)

加療後4日(側面)

加療後11日(側面)

加療後15日(背側)

加療後15日(側面)

加療後22日(背側)

加療後22日(側面)

加療後29日(背側)

加療後29日(側面)

加療後36日(背側)

加療後36日(側面)
【追記】点滴漏れによる皮膚壊死の症例について再掲します(初出:2016年5月9日)こちらの症例は、
今から約10年前(2015年頃)に経験したものです。
近年、点滴漏れによる皮膚壊死を発症された方からのお問い合わせや受診が増加していることを受け、
2016年5月9日に掲載したブログ記事を加筆・再構成のうえ再掲いたしました。
同様の症状でお悩みの方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。