大阪市淀川区・新大阪にある【こおりたひろ整形形成外科クリニック】院長の郡田です。
今回は、炎症性粉瘤をくりぬき法で摘出し、術後4年経っても傷跡がほぼ残らなかった症例をご紹介します。
◆患者さんについて
患者さんは30代の方です。
約1年前から頚部に粉瘤(アテローム)があったそうですが、数日前より徐々に腫れと痛みが増し、当院受診の4日前に近隣の〇〇皮膚科を受診されました。
その際、医師からは
「炎症が強いので、今は手術できません。とりあえず抗生物質で様子を見ましょう。」
と説明され、抗生物質が処方されたそうです。
しかし、薬を内服しても全く改善せず、むしろ腫れと痛みが悪化し、夜も眠れないほどの状態となりました。
◆当院での初診と説明
「炎症が強くても手術してもらえる医療機関」をご自身でネット検索され、手術目的で当院を受診されました。
私は以下の説明をさせて頂きました。
✅① 感染性のある粉瘤に抗生物質は効きません
炎症は粉瘤の袋(被膜)内部で起きています。
しかし、粉瘤の袋には血管が通っていないため、どんなに強い抗生物質を内服しても、薬は袋の内部に届かず、効果はありません。
もう一度申し上げますが、炎症している粉瘤に対して抗生物質は無効です。
✅② 当院での炎症を起こした粉瘤に対する手術の対応方針
炎症が強いからといって、手術ができないわけではありません。
当院ではこれまでに多数の炎症を伴ったアテロームを「くりぬき法」で手術してきました。
ブログでも多くご紹介しています。
赤く腫れた粉瘤であっても、全く問題無く手術をする事が出来ます。
これらの説明に、患者さんは安心されたご様子でした。
そして、「前の医者の説明は何だったんですか?」と少しご立腹されていました。
同じ医師として、私の方から代わりにお詫びいたしました。
◆手術と術後経過
当院では、感染状態にある粉瘤でも通常通りくりぬき法で袋ごと摘出いたしました。
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術中にも抗生物質は使用しておりません
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術後も一切処方しておりません
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術後は「なつい式湿潤療法」にて創部を管理
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消毒やガーゼ交換は一切行っておりません
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手術翌日からシャワー・入浴も可能
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感染も再発もありませんでした
◆術後4年目の再受診と長期経過
術後4年が経過した頃、別部位の粉瘤の手術を希望されて再度ご来院されました。
その際に、頚部の手術痕の状態を確認し、写真を撮影させていただきました。
患者さんからは、
「どこを手術したのか、もう全く分かりません。綺麗に治してくださって、本当にありがとうございました。」
という非常にありがたいお言葉をいただきました。
私自身もこのような経過を共有でき、大変嬉しく思っております。

赤く腫れて痛みを伴う頚部の粉瘤です。他院では抗生物質で様子を見るように言われたとのことですが、当院でくりぬき法による手術を行いました。

頚部の赤く腫れた粉瘤から、膿状の内容物を排出しているところです。この後、くりぬき法で袋(被膜)も完全に摘出しています。

炎症を起こした頚部の粉瘤から、被膜(袋)を丁寧に摘出している術中の写真です。くりぬき法でも、しっかりと被膜を除去できます。

炎症を伴った頚部の粉瘤を、くりぬき法で摘出した直後の写真です。創部は小さく、被膜まで完全に除去されています。

術後2日目の創部です。痛みはほとんどなく、「不思議なほど痛くありません」と患者さんは話されていました。感染傾向も全く認められません。

術後4日目の状態です。赤みが和らぎ、痛みや感染は全く認められません。患者さんは「手術をしたことを忘れるくらいです」と笑顔で話されていました。

術後14日目の創部の状態です。ほぼ治癒しており、痛みや感染の兆候は全くありません。あと1週間ほどで完治する見込みです。

くりぬき法で摘出し、なつい式湿潤療法で治療した炎症性粉瘤の術後5年目の写真です。どこを手術したのか分からないほど綺麗に治っています。
🔵 粉瘤(アテローム)に関するよくあるご質問(FAQ)
Q1. 粉瘤とは何ですか?
A.
粉瘤(ふんりゅう、アテローム)とは、皮膚の下にできる袋状の良性腫瘍です。
中には皮脂や角質が溜まっており、自然に消えることはほとんどありません。
放置すると炎症を起こし、腫れ・痛み・膿が出ることがあります。
Q2. 粉瘤は自然に治りますか?
A.
自然に治ることは基本的にありません。
小さくなることがあっても、内部の袋(被膜)が残るため、再発することが多いです。
再発予防には手術による摘出が必要です。
Q3. 炎症があるときは手術できないのですか?
A.
他院で「炎症があると手術できない」と言われることがありますが、
当院では炎症があっても「くりぬき法」による手術が可能です。
むしろ早期の手術により、痛みや腫れが早く改善します。
Q4. 抗生物質では治らないのですか?
A.
炎症が強い粉瘤には抗生物質は無効です。
なぜなら、炎症は袋の内部で起きており、その袋には血流がないため、薬が届かないからです。
よって、袋ごと手術で取り除くことが根本的な治療になります。
Q5. 手術はどんな方法ですか?
A.
当院では「くりぬき法」という方法を用いて、できるだけ小さい傷で袋(被膜)まで完全に取り除きます。
傷跡も非常に小さく、術後の痛みも最小限です。
Q6. 術後の処置はどのように行いますか?
A.
なつい式湿潤療法という方法で、傷を乾かさずに治す処置を行っています。
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消毒しません
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ガーゼ交換不要
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シャワー・入浴も翌日からOK
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抗生物質も基本的に処方しません
Q7. 術後に再発することはありますか?
A.
袋を完全に摘出できれば再発はほとんど御座いません。
当院では術中に被膜をしっかり取り除くことを重視しています。
Q8. 手術後の痛みや腫れはどの程度ありますか?
A.
炎症が強かった症例でも、術後の痛みは少ないケースがほとんどです。
多くの患者様が「想像していたより痛くない」と話されます。
Q9. 粉瘤が小さいうちに手術した方が良いですか?
A.
はい、小さいうちに手術することで、傷跡も小さく、手術時間や回復も短く済みます。
炎症が起きてからでは、痛みも強く治療が複雑になります。
Q10. 粉瘤の手術は健康保険が使えますか?
A.
はい、粉瘤の手術は保険診療の対象です。
手術の規模や部位により、負担額が異なる場合があります。